
フリーランスとして独立したあと、数年後にサラリーマンに戻る。このパターンは定期的にSNSで話題になります。
「やっぱり失敗して戻ってきた」と笑う人と、「挑戦したこともないくせに」とバカにし返す人。わかりやすい構図ですが、どちらの立場にも違和感を覚えます。
キャリア支援の現場で強く感じるのは、「フリーランスか会社員か」という肩書きより、「その経験から何を学んだのか」の方がはるかに重要だということです。独立したかどうかよりも、そのプロセスをどう振り返り、次の一歩に活かせているかが、キャリアの質を分けていきます。学びがなければただの時間の浪費ですが、何か一つでも糧になっているなら、その挑戦は十分「元は取れている」と考えていいのではないでしょうか。
フリーランスになったことで、自分がどんな仕事ならエネルギー高く取り組めるのか、どこまでのリスクなら背負えるのかが見えてくる人もいます。その実感を持ったうえでサラリーマンに戻るのであれば、それは「負け」ではなく、学びを踏まえた再選択だと捉えられるはずです。
大事なのは、「挑戦したかどうか」そのものよりも、「自分で選んだと言えるかどうか」です。独立して挫折して戻るにしても、その過程で痛みや学びを自分の糧にできているなら、それは十分に価値のある時間だったはずです。逆に、何も振り返らずに「向いていなかった」で片づけてしまうのであれば、フリーランスでもサラリーマンでも、その時間はただ過ぎていってしまいます。
そして、「他人のキャリアを評価している時間、自分のキャリアは一歩も進まない」という事実も忘れたくありません。人の独立や転職を笑ったり、「挑戦しない人はダサい」と切り捨てたりしている間、自分の今日一日の学びや成長にはほとんど意識が向いていません。
もちろん、他人のストーリーに勇気をもらったり、反面教師にしたりするのは悪いことではありません。ただ、「フリーランスはすごい」「サラリーマンは安定」とラベルを貼って終わらせず、「では、自分は今日何を学んだだろう」「この一年でどんな挑戦を積み重ねたいだろう」と、自分に矢印を戻していくことが大切です。
もし今、あなたが独立に興味を持っていたり、逆にフリーランスからの復帰を迷っていたりするなら、「この選択から何を学びたいだろうか」「これからの数年で、どう成長していたいだろうか」と一度問いかけてみてください。他人のキャリアを語るより、自分のキャリアに静かに向き合う時間を持つこと。その積み重ねが、「自分で選んできた」と言える人生をつくっていくのではないでしょうか。