経営をしていると、つい“未来志向”になりすぎてしまうことがあります。
次の一手、事業の拡大、仲間の採用──。常に先を見据え、前に進もうとすることは、経営者としての宿命かもしれません。
けれど、最近あらためて感じているのは、どんなに前を向いていても、私たちの時間には「終わり」があるということです。
この仕事も、この挑戦も、そしてこの人生も、決して永遠には続かない。
だからこそ、いま目の前にある出来事や関係性が、何よりもかけがえのないものに思えてくるのです。
有限であること。それは決してネガティブな要素ではありません。
むしろ、すべての瞬間を特別にする“力”のようなものだと思うんですよね。
そして、それが本当に「有限なのだ」と自分の内側で腑に落ちたとき、日常の見え方が少しずつ変わってきます。
朝早く目覚めて、まだ静かなオフィスで一人考える時間。
仲間と交わす何気ない会話や笑い声。
うまくいかず、悩み抜いた末に小さな突破口が見えたときの喜び。
これまでなら通り過ぎていたかもしれない、そんな一瞬一瞬が、「もう二度と同じ形では訪れない、かけがえのないもの」として、静かに輝きを放ちはじめるのです。
そして何よりも、今こうして関わってくださっている方々の存在が、どれほど尊いものか──
正直に言えば、私はまだその重みを完全に受け止めきれているわけではありません。
でも、だからこそ忘れずにいたいと思うのです。
人との出会いや関係性は、永遠ではない。
時間も、状況も、いつか必ず変わる。
そう思うと、「ありがたい」と感じながら日々を過ごすことの大切さを、少しずつ学んでいる最中です。
社員、パートナー、クライアント、そして応援してくれている家族や友人。
その誰ひとりとして「当たり前にそこにいる」わけではないと、時折思い出すようにしています。
この道を共に歩んでくれること。
ときに挑戦の背中を押してくれること。
失敗しても、なお信じてくれること。
そんな関係性に、自然と湧きあがる「ありがたさ」を忘れずに生きていたい──
そう願いながら、日々を積み重ねています。
まだ出会っていない人たちにも、いつか感謝する日が来るかもしれません。
未来にどんな人と、どんな出来事と出会えるかは、わかりません。
でも、これまでの出会いがそうであったように、きっとその一つひとつが、自分の人生に新しい彩りを与えてくれるのだと思います。
事業を成長させることも、数字を積み上げることも大切です。
でもそれ以上に、どんな関係を築き、どんな時間を過ごせたか。
その“質”こそが、最終的に自分の人生の輪郭を形づくるのではないかと思うのです。
もし、あなたがいま日々の忙しさに追われているとしたら。
ぜひ一度、立ち止まってみてください。
この仕事、この人、この時間──
それは永遠に続くものではないとしたら、あなたは何を大切にしたいでしょうか?
限りある時間の中で、誰と、どんな瞬間を刻んでいくのか。
それを自分の意思で選べたとき、働くことも生きることも、もっと豊かになるのだと思います。
見過ごしていた瞬間に、実は人生のヒントが隠れているかもしれません。
静かに深呼吸するように、自分の時間と向き合いたくなったとき、
キャリアセッションがそのための場になれたらと思っています。