私はこれまで、数多くのビジネスパーソンとコーチングを通して向き合ってきました。経営層からリーダークラスまで、その背景や抱える課題はさまざまですが、共通して見られる傾向があります。
それは、すでに努力し、結果を出してきた人ほど「もっと頑張らないと」「もっと成長しないと」と自分を追い込みやすいということです。
周囲から見れば十分に実績を上げ、信頼を得ている。けれど、当の本人はどこか満たされず、「このままでいいのだろうか」「何かが止まっている気がする」と漠然とした違和感を抱えています。そしてその違和感に真正面から向き合う前に、新たな目標を掲げ、さらに高い負荷を自分にかけようとする。
もちろん、挑戦する姿勢は素晴らしいものです。努力や自己成長は、キャリアを前に進めるうえで大切な要素です。ただ、ここで私が違和感を抱くのは、“なぜ頑張るのか”“どこに向かいたいのか”が定まらないまま、頑張ること自体を目的にしてしまっている状態です。
方向が定まっていないのに、とりあえず自分の殻を破ろうとする。やり方や手段を問う前に、まずはエンジンをふかそうとする。その姿勢は一見、前向きに見えるかもしれません。でも実際には、自分の内側で起きている違和感や疲弊感に蓋をしながら突き進もうとしているように見えることがあります。
本来、キャリアとは“目的地のない旅”ではありません。どこに向かうのか、なぜその方向なのか、それを自分の中で理解していることが、納得感ある歩みには欠かせない。むしろ、「立ち止まって考える」という行為こそ、今の時代における大切なスキルではないかと思うのです。
コーチングの現場でも、「もっと前に進むために、まず今の自分を整理したい」という声をよく聞きます。
たとえば──
自分にとっての心地よい働き方や生き方とはどんなものか
これからどんな姿でありたいのか
こうした問いにしっかり向き合うことで、自分の軸が整い、自然と方向性やペースが定まっていきます。
頑張ることは悪いことではありません。
でも、頑張る前に「どこに向かうのか」「なぜそこを目指すのか」を自分の言葉で語れること。その状態にこそ、本当の意味での自立や成長の可能性が宿ると、私は信じています。
今、もしあなたが「このままでいいのか」と感じているなら、それは“もっと頑張れ”というサインではなく、“いったん立ち止まり、向き合うべきタイミング”なのかもしれません。
自分の声に耳を澄ませ、見えない焦りをほどいていく。
そんな時間の中にこそ、本当の答えが眠っているのではないでしょうか。
「頑張ってるのに、何かが満たされない」
「次の目標を決める前に、いったん立ち止まりたい」
そんな違和感を感じたら、一度私たちにご相談ください。