そう思われる方も多いかもしれません。実際に調べると、「傾聴」「質問力」「コーチング」「フィードバック」「関係構築力」などが並び、どれも間違いなく大切です。私自身、長年キャリア支援の現場でコーチングを行ってきましたが、これらのどれか一つが欠けても、良い1on1は成立しにくいと実感しています。
けれど、それでもなお、どうしても伝えたいことがあります。
それは、これらの“スキル”を支える土台にあるのは、「人としての姿勢」だということ。たとえば、相手に対するリスペクトや、話してくれることへの感謝の気持ち。それこそが、スキルを生きたものに変える“根っこ”ではないでしょうか。
1on1の場において、上司や支援者である自分が「聞いてあげている」という無意識の構えを持ってしまうことがあります。でも、誰かに悩みを打ち明けることは、想像以上に勇気のいることです。心を開いてくれるその姿勢に、まずは感謝を伝える。これは決して“お行儀の良いマナー”などではなく、対話を深める鍵です。
「この人は自分を対等に扱ってくれる」「本当に受け止めようとしてくれている」
そう感じたときにこそ、相手は本当の意味で心を開いてくれるのだと思います。
もちろん、質問の精度や傾聴のスキルも必要です。でも、それ以上に、「この人は自分を尊重してくれている」と感じてもらえるかが問われます。
そして正直なところ、かく言う私も、まだまだ修行の途中です。
「感謝しよう」「リスペクトを忘れずに」と頭でわかっていても、時間に追われたり、相手に過度な期待をしてしまったり、自分の正しさを押しつけそうになったり。
人と人との対話は、常に自分自身の未熟さを映し出してくれる鏡でもあります。
だからこそ、スキルに逃げず、「姿勢」と向き合い続けることが、1on1の質を育てる道なのだと、今は感じています。
1on1は、ただの「面談」ではなく、信頼を育む営みです。その信頼をつくるのは、スキルではなく、どこまでも“人間としてのあり方”なのかもしれません。
今日、誰かとの対話があるなら
「話してくれてありがとう」
そんなひと言から始めてみるのはいかがでしょうか。
「今日の対話に、感謝を伝えられただろうか?」
そんな問いを、1on1の終わりに持ってみてはいかがでしょうか。